一級建築士 試験

令和 7年一級建築士設計製図試験の講評

- 令和 7年10月12日 -

本年度の課題: 「庁舎」


今年度の本試験の課題は、特に大きな想定外の条件もなく、一見、難易度としては易しいと感じられるものでしたが、この課題条件のような建物を実際に設計するとしたならば、基本設計に何ヶ月もかけて検討することとなると考えられる程に様々な難しい内容を含むもので、試験の場合にどのような採点の基準になるかにもよりますが、相当に難しい建築計画上の内容を含むものであったといえます

予め試験課題発表時に示された留意事項は以下の4点で、
  1. 敷地の周辺環境に配慮して計画する。
  2. バリアフリー、省エネルギー、二酸化炭素排出量削減、セキュリティ等に配慮して計画する。
  3. 各要求室を適切にゾーニングし、明快な動線計画とする。
  4. 大地震等の自然災害が発生した際に、 建築物の機能が維持できる構造計画とする。

また、本試験の設計条件としては以下の4点が示されていました。
  1. 誰もが使いやすい施設計画
  2. 夜間、土日祝日におけるセキュリティへの配慮
  3. 省エネルギー及び二酸化炭素排出量削減への配慮
  4. 大地震等の自然災害が発生した際の庁舎の機能維持

以上の留意事項、設計条件を踏まえて以下にこの課題の建築計画上、特に留意すべき問題点等についてみて行くこととします。

(1)敷地条件
  1. 周辺条件
    敷地周辺は、北側は幅員14mの道路を挟んで地上2階建ての店舗併用住宅、東側は幅員6mの道路を挟んで公共駐車場・駐輪場、南側は防火上有効な公園、西側は公共駐車場・駐輪場からなります。

  2. アプローチの検討
    北側:幅員14mの道路を挟んで地上2階建ての店舗併用住宅 …メイン(利用者用)アプローチとする。
    東側:幅員6mの道路を挟んで公共駐車場・駐輪場 …サブ(管理用)アプローチとする。 南側:南側は防火上有効な公園 …住民交流スペースの特記事項において、公園との関係性に配慮することと あることから、試験の解答としては住民交流スペースと公園を結ぶ出入口を設けることが安全であると考えられます。
    西側:西側は公共駐車場・駐輪場…特にアプローチ指定はないためアプローチについて計画する必要はありません。

(2)建物の計画についての条件
●建物の延床面積についての条件
この課題では、近年の課題条件の特長でもある自由度の高い課題条件として延床面積の制限が示されていません。
このため、準住居地域及び準防火地域で建蔽率の限度は80%(所定の加算を含む。)、容積率の限度は300%であることから容積率の上限は5,040m2となりますが、建蔽率が80%であることから延床面積は建築面積1,344 ㎡の3倍の4,032m2が最大となります。但し、建築計画上、敷地境界と建物の距離を南側(公園側)を3~4m程度、北側(建物正面メインアプローチ側)を6~7m、東側(サブアプローチ側)を4~6m、西側を2m程度とすることを考慮して、建築面積、延床面積を決めなければならないことに留意する必要があります。

●「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」に規定する「建築物移動等円滑化基準」を満たすものとする。(ただし、主たる階段は、幅1,400㎜以上、蹴上げ160㎜以下、踏面300㎜以上とする。)

定石通り、階段は利用者ゾーンにメイン(利用者用)階段を設け、管理ゾーンにサブ(管理用)階段を設け、メイン階段を課題条件の「建築物移動等円滑化基準」を満たすものとします。この場合、この階段が納まる条件として、建物の階高、柱間スパンの寸法に注意する必要があります。

(3) 要求室
●議場(3階指定、200㎡以上)
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