二級建築士 試験
令和 6年 二級建築士学科試験の総評
- 令和 6年 7月 7日 -
令和6年度の試験は、特に目立った難問の出題は少なく、全体的には過去問への理解が着実にできていれば対応が可能な問題が多く出題されました。
科目別の難易度では、学科Ⅰ(建築計画)の難易度は概ね例年並みで、学科Ⅱ(建築法規)はやや低めであったのに対して、学科Ⅲ(建築構造)、学科Ⅳ(建築施工)はやや高めで、総合的な難易度は概ね例年並みであったといえます。
前述のように、本年の試験では、
過去問を基にした問題が多く出題され、過去問への着実な理解があれば対応可能な問題が多く出題された一方で、過去問を基としながらも種々出題に工夫をこらした問題も多くみられ、これらの問題については、単に過去問を表面的に理解し、こなすのみでは対応することは難しく、
より深い理解、着実な理解をしっかり身に付けていることが重要ポイントになったと考えられます。
学科Ⅰ(建築計画)
建築計画の出題範囲は、建築史、計画原論、計画各論、建築設備と非常に広範囲の分野に渡りますが、全体的に概ね過去問へのしっかりした知識があれば対応できる問題が多かった中で、
特に計画原論、建築設備の分野の問題では、近年の環境、省エネルギーへの社会的関心が非常に高くなってきていることの影響からか、計画原論に係わる建築環境工学の用語に関する問題や建築設備に係わるハイブリッド給湯システムや平板型の太陽熱集熱器等の問題で比較的難易度の高い、
新規の問題や応用問題が出題されたことは注目されます。
学科Ⅱ(建築法規)
建築法規では、例年通りに建築基準法の問題が20問、関係法規の問題が5問出題されましたが、いずれの問題も概ね過去問についての着実な知識があれば解ける問題であったといえます。
毎年出題されている建築基準法の計算問題は、本年は、採光有効面積、建ぺい率、容積率、高さ制限についての問題が出題され、特に採光有効面積の計算についての問題では、隣地境界線の反対側に川があることによる緩和条件が適用される問題が初めて出題されました。
更に、関係法規に関する問題として、宅地造成及び特定盛土等規制法についての難度の高い、新規の問題が出題され、また、
景観や保存等の良質な社会資産の蓄積へ関心が高くなってきた近年の社会状況によるとも考えられる、景観重要建造物や伝統的建造物保存地区に関する問題が出題されたのも、今後の傾向を考える上で注目されます。
学科Ⅲ(建築構造)
建築構造の出題分野は、例年通り、構造力学6問、各種構造13問、建築材料6問でした。
構造力学の6問はいずれも基本的には過去問を基とした問題でしたが、単なる過去問の焼き直し問題ではなく、出題に工夫をこらしたと考えられる問題で、過去問についての表面的な理解では対応が難しく、より深い着実な理解を必要とする問題が出題されました。
また、各種構造では、鉄骨構造設計に関するやや難度の高い問題が出題された他、
木造に関する問題として、各種構造で木造枠組壁構法に関する難度の高い問題が出題され、更に建築材料の問題として、木材・木質系材料に関する新規のやや難度の高い問題が出題されたのは注目されます。
学科Ⅳ(建築施工)
建築施工の本年の出題についても多くは過去問を基とした過去問についての着実な理解と知識があれば解くことのできる問題でしたが、土工事、防水工事、改修工事、請負契約についての問題では、新規の選択肢が正答となる比較的難易度の高い問題が出題されました。
特に請負契約についての問題は、工事監理契約とまぎらわしい選択肢が含まれており、
施工管理と工事監理との相違等の建築生産体系の根本に係わる基本的な知識を問う良問ということができます。
また、
近年の木造建築重視の傾向を反映し、木造住宅の基礎工事など木工事に係わる問題が昨年に引き続き3問出題されたことも注目されます。
上記のように、本年度の試験問題は例年に比して難易度の比較的高いものから低いものなど、様々のものが含まれているものの、
総じて過去問を基としている問題が多く、その場合、単に表面的な理解にとどまらず、より深く着実に理解しているか否かが問われる問題が種々含まれていることから、
過去問を単に表面的に付け焼き刃的にこなすのではなく、いかに着実に確実に理解しているかが合格のための重要な鍵となったと考えることができます。