一級建士試験築
令和 6年一級建築士設計製図試験課題の講評
-本課題の本質的な意味と対策-
- 令和 6年7月26日 -
【課題の講評
本年度の一級建築士設計製図試験の課題は以下のように発表されました。
課題:「 大 学 」
■要求図面
- ・1階平面図・配置図(縮尺1/200)
- ・各階平面図(縮尺1/200)
※各階平面図については、試験問題中に示す設計条件等において指定する。
- ・断面図(縮尺1/200)
- ・面積表
- ・計画の要点等
■建築物の計画に当たっての留意事項
- ・敷地の周辺環境に配慮して計画する。
- ・バリアフリー、省エネルギー、二酸化炭素排出量削減、セキュリティ等に配慮して計画する。
- ・各要求室を適切にゾーニングし、明快な動線計画とする。
- ・大地震等の自然災害が発生した際に、建築物の機能が維持できる構造計画とする。
- ・建築物全体が、構造耐力上、安全であるとともに、経済性に配慮して計画する。
- ・構造種別に応じて架構形式及びスパン割りを適切に計画するとともに、適切な断面寸法の部材を計画する。
- ・空気調和設備、給排水衛生設備、電気設備、昇降機設備等を適切に計画する。
■注意事項
- 「試験問題」及び上記の「建築物の計画に当たっての留意事項」を十分に理解したうえで、「設計製図の試験」に臨むようにしてください。
なお、建築基準法等の関係法令や要求図書、主要な要求室等の計画等の設計与条件に対して解答内容が不適合又は不十分な場合には、「設計条件・要求図面等に対する重大な不適合」等と判断されます。
課題の解説
●本課題の本質的な意味と対策
令和6年一級建築士設計製図試験の課題は、上記のように「大学」と発表されましたが、
課題の「大学」には、従来の課題の傾向とやや異なる印象を持った方も多いのではないでしょうか。
その場合、その異なる印象はどこから来るのでしょうか。それは多分、課題となる建物が、従来の課題のような一級建築士設計製図試験の課題として適当と考えられる建物の規模、内容のものとはいえない、建物の規模としては大き過ぎ、内容としては多岐にわたって広すぎるものであることから来ているのではないでしょうか。
確かに大学というだけでは、一見あまりに漠然としており、建物の規模は、試験の規模をはるかに超えるものであり、また、その施設の内容、種類も、事務局、教室、研究室、食堂等の厚生福祉施設、図書館、交流会館等、実に多種多様で、一体どの施設が試験の対象となるのか、全く予想できないというのが実感といえるのではないでしょうか。
このように、
この課題は、一見、従来の課題の傾向とは全く異なるもののようにも思われるのですが、その実、以下のような理由で近年の一貫した設計製図試験の新傾向の延長線上に今回の課題は実はあるものとも考えることができます。
それは、近年の課題の「事務所ビル」や「集合住宅」におけるように、それ以前の課題のような「美術館の分館」「健康づくりのためのスポーツセンター」「大学のセミナーハウス」等のような試験の課題として、具体的に規模、内容等において、適当と考えられるようなものとは考えにくいものであるということによると考えることができます。
このことは、課題の規模、内容が一見とらえどころのないものとなるとも考えられる訳で、従前のような課題のように課題の出題の範囲がある程度限定されていることにより、いくつかのパターン化した演習課題の解答例を記憶するような勉強法で対応することは困難となる訳で、
本来の設計製図試験の主旨ともいえる、しっかりした建築計画力を身に付けることが確実な合格を得るために不可欠となってきた訳です。
これは平成21年に試験の実施センターから発表された試験内容の見直しにおける建築計画力(空間構成力)の重視にも通じるものと考えることができ、また近年、日本建築学会より建築士設計製図試験への提言として出された設計製図試験におけるエスキースの重視にも通じるものと考えることができます。
今回の試験の課題「大学」の内容は正に、単に固有の定形化された特定の建物の施設の内容に必ずしも限定することのできない広範囲なもので、その意味で本年の課題は、
近年の試験の傾向に沿う、従来にも増して基本的な建築計画力を要する課題となってきていると考えることができます。
●本課題への対策
以上のように、
本課題は、「大学」という極めて漠然としたものであるが故に、様々な要素からなる様々な広範囲な内容の課題となり得るもので、それらをいくつかのパターンとして覚えておくことを主眼としたような勉強法では対応が困難な課題であるということができ、
以上のような傾向の課題については、様々な多種多様な課題条件に着実に対応できるような建築計画力をしっかり身に付けておくことが極めて重要であるといえます。
建築計画において重要なポイントとなる
ゾーニングや動線についての考え方は、一見、課題条件によって実に多種多様な場合がある訳ですが、その一方でそれらの根底となる考え方には、基本的にはいくつかの共通する考え方がある訳で、それらの共通するいくつかの基本的な考え方を着実に身に付けておき、それらを様々な内容の課題に適応させていく訓練を積み重ねていくことにより、応用力が養われ、多種多様な内容の課題にも適切に対応することのできる建築計画力を身に付けることが可能となります。
●本会講座の特長
本会の講座は、設計(建築計画)及び製図についての着実な基礎力の養成から着実な合格力の養成を目指すものですが、
特に近年の試験の傾向から、合格のための重要な鍵となる建築計画力の徹底養成を図る内容となっております。
通学、通信講座ともに全く同一のカリキュラム、内容で、建築計画力の徹底養成のために、
全ての演習10課題について添削指導することとしており、また、通学、通信講座ともに全ての課題(演習課題10、応用課題5)について建築計画上の考え方に重点を置いたWeb動画による詳細なサポート解説(各約150分)を配信することとしております。
着実な建築計画力の養成のためには、演習課題の内容のクォリティ(質)が極めて重要となるため、本会講座では、本会会員の日本建築学会賞受賞者をはじめとする第一線の建築家であるベテラン講師陣が、着実な建築計画力の養成を念頭に系統的、段階的に作成する課題から添削指導まで一貫して担当することとしております。
本会講座における各段階の演習課題の内容は、本試験課題の内容を徹底的に検討して作成したものであることにより、個々の演習課題の内容が本試験の課題内容と似たものとなることもあり得ますが、本会の講座はあくまでもパターン化した事項の記憶によるヤマを当てる式の勉強ではなく、着実な建築計画力の養成が合格へ至る最も重要で確実な道であるとの主旨から構成され、着実な実績をあげております。