合格への鍵 ~重要必須事項について、近年の問題を通して解説~

(本欄は、当会の建築士講座講師が適宜分担して担当し、当会建築士講座監修者(元国土交通省室長)が総合監修します。)

第 3 回

(平成30年度)
―新傾向の問題で出題頻度が高く定番となりつつある問題は?―

 前回では、近年、新規な問題として出題されたもので、出題頻度が高く、定番のようになってきた問題について概要を記しましたが、今回からは具体的に試験問題を通して記して行くこととします。
 まず、近年、出題頻度の多くなってきた建築士法の問題について記すこととしますが、個々の建築士法の問題について考える前に建築士法の骨格についてしっかり理解しておくことが重要です。

 すなわち、通常、委託者(施主)は建物を造るときには、設計を依頼し、その設計に基づいて建物を造ることを施工者に依頼する訳ですが、その場合、施工者側の業務である施工管理に対して、委託者側からの依頼により施工管理が適切に行われているか確認する工事監理が建築士法上不可欠の業務です。なお、工事監理と施工管理とは立場が異なるため完全に区分されていなければならないことを理解しておく必要があります。
 工事監理と施工管理とは、言葉としても似ていてまぎらわしいため、実務の世界では、工事監理の監には皿という字が含まれているため、工事監理を施工管理と区分するため、「サラカン」と言ったりする場合もあります。 なお、建設業法上、一定規模以上の工事において必要とされる監理技術者は、施工管理側に置かれる技術者のことで、工事監理側とは無関係であることにも留意が必要です。

 次に重要なことは、設計や工事監理等の建築士法第21条で規定されている業務を行う建築士は、必ず建築士事務所に属していなくてはならないということです。(法第23条)
 これは、社会的影響度の大きな建築士の行う主な業務については、個人としての建築士では負担できる責任に限界があるため、必ず組織(建築士事務所)に属している必要があり、個人としての建築士が誠実に業務を行い、その建築士が属している建築士事務所がしっかりしていることが、社会の負託に応えるために必要であるという考え方が、建築士法上の基本理念となっているためです。
 このため、建築士法では、個人としての建築士の在り方と建築士事務所の在り方とが表裏一体のように規定されており、それが建築士の試験の問題にも反映されていることに留意する必要があります。

 また、設計・工事監理等の業務については主に建築士法の関係する範囲で、施工監理等については主に建設業法等の関係する範囲であることも理解しておく必要があります。
 なお、設計・工事監理業務は、建築を具現化するための計画に係わりの深い業務であるため、建築士法上のこの分野の問題が近年、一級建築士計画の問題として出題されるようになってきたことは当然のこととも考えられます。


【問題1】建築物の設計・工事監理の契約に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
  1. 一級建築士の設計によらなければならない建築物の工事において、設計施工一貫の工事であれば、工事監理者を置く必要はない。
  2. 工事監理者は、工事が設計図書のとおりに実施されていないと認めるときは、直ちに工事施工者に対してその旨を指摘し、設計図書のとおりに工事を実施するように求め、工事施工者がこれに従わないときには、その旨を建築主に報告しなければならない。
  3. 一級建築士事務所において、建築士法で定める重要事項の説明については、管理建築士のほか、当該建築士事務所に属する一級建築士も行うことができる。
  4. 建築士は、建築士事務所としての登録を受けないで、他人の求めに応じ、報酬を得て、設計又は工事監理の業務を行ってはならない。
 この問題は、平成26年一級建築士計画の問題ですが、設問1において、上記のように工事監理は不可欠の業務であり、また、設計・工事監理は建築士事務所に属している建築士でなければ行ってはならないので、設計施工の場合は、必ず施工会社は建築士事務所を設立し、設計・工事監理を行う建築士はその事務所に属していることが条件となっています。
 このため、1が誤りとなります。
 なお、2、3、4は設問の通りですが、2の設問で工事監理者の指摘したことに工事施工者が従わないときには、その旨を建築主に報告しなければならない(法第18条第3項)という部分を特定行政庁等として誤りの設問として出題されることも多いので、注意する必要があります。

【問題2】建築士事務所に関する次の記述のうち、建築士法上、誤っているものはどれか。
  1. 建築士は、他人の求めに応じ報酬を得て、建築工事の指導監督のみを業として行おうとするときであっても、建築士事務所を定めて、その建築士事務所について、都道府県知事(都道府県知事が指定事務所登録機関を指定したときは、原則として、当該指定事務所登録機関)の登録を受けなければならない。
  2. 建築士事務所の開設者は、建築物の建築に関する法令又は条例の規定に基づく手続の代理の業務について、建築主と契約の締結をしようとするときは、あらかじめ、当該建築主に対し、重要事項の説明を行わなければならない。
  3. 建築士事務所の開設者は、委託者の許諾を得た場合においても、委託を受けた設計又は工事監理(いずれも延べ面積が300㎡を超える建築物の新築工事に係るものに限る。)の業務を、それぞれ一括して他の建築士事務所の開設者に委託してはならない。
  4. 建築士事務所の開設者と管理建築士とが異なる場合においては、その開設者は、管理建築士から建築士事務所の業務に係る所定の技術的事項に関し、その業務が円滑かつ適切に行われるよう必要な意見が述べられた場合には、その意見を尊重しなければならない。
  5. 建築士事務所の開設者は、設計等の業務に関し生じた損害を賠償するために必要な金額を担保するための保険契約の締結その他の措置を講ずるよう努めなければならない。
 この問題は、平成29年二級建築士法規の問題で、いずれも建築士事務所についての設問ですが、設問2における委託者側への受託者側からの必要とされる重要事項の説明は、設計、工事監理業務の締結をする場合ですので、設問2は誤りです。
 また、設問3、設問4、設問5は、いずれも平成27年度に建築士法の改正された部分で、改正後間もなく試験問題として出題されたものです。
 なお、問題1、問題2の内容からも建築士法の問題では、一級、二級の試験問題間の差はほとんどないことがお分かりになると思います。

 次回は、管理建築士の業務等について、試験問題例を踏まえ解説することとします。


第2回解説 2017年 9月 4日 新傾向の問題で出題頻度が高く定番となりつつある問題は?
第1回解説 2017年 8月25日 本当の新傾向の問題とは何か?
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