全日本建築士会の活動と紹介

木造建築文化の継承と発展のために

 「住み手とともに地域の風土や生活に根ざした住まいをつくろう」・・・私たちはこのことを会の基本に据え活動を進めてきました。今、その重要性が改めて認識されてきています。
 振返れば戦後の住宅の歴史は、気候風土や生活習慣との関係を断つ形で進んできたといえるかも知れません。冷暖房効率の視点から、盛んに奨励されている高気密・高断熱の住まいも、言葉を変えていえば、外気との関係をできるだけ断ち、人工的に室内環境をコントロールしようという発想で生まれたものです。輸入住宅も話題を集めていますが、各国で長い年月をかけ育てられてきた住宅が、そのまま日本の風土にふさわしい住宅でしょうか。また、施工者が施主と顔を合わせながら住まいをつくり、そしてその維持管理をしていく日本独特の伝統も、工場の大量生産の陰に姿を消そうとしているかのようです。
 しかし、日本の気候風土が、この地にふさわしいと長年にわたり育んできたのは、在来軸組工法による木造住宅であり、町場の大工工務店による住宅建設・保守の仕組みでした。今日、そのような在来木造住宅がいっそう質的に高く、人々の日々に応え、また構造的安全性をしっかり確保したものであることが要求されています。
 一般社団法人全日本建築士会は、在来工法の継承と発展、木造建築文化の発展を目指し、さらに努力する所存です。

住み手とともに歩む建築士会を目指して

 昭和32年5月15日、建築士法の一部改正が行なわれ、新たにおよそ8万人の二級建築士が誕生しました。以前から、日本固有の風土に根ざした建築を守り、住み手と共に歩む魅力ある建築士会をつくりたいと考えていた有志は、この新制度発足を機に新しい建築士会設立の気運が高まり、初代会長に故今和次郎氏(早稲田大学教授)を迎えて、昭和33年9月6日、全日本建築士会設立総会が開かれました。
 この総会には、建築に携わる文化人、学者、設計者をはじめ、全国建設労働組合連合会(全建総連)傘下の大工技能者や国鉄、自治体、日建協、住宅公団、建設省等の技術者も多数集まり、翌昭和34年3月6日には、建設省から一般社団法人の認可を受け、故竹内芳太郎氏(元東京教育大教授)を会長に、正式に一般社団法人全日本建築士会がスタートしました。その後も歴代会長のもと、一貫して在来工法の継承と新工法の開発に努め、木造建築文化の発展をめざしてさまざまな活動を進めてきました。
 いうまでもなく木造建築文化は、日本が世界に誇る貴重な財産です。その継承と発展に向かって、多くの建築士の皆さんが全日本建築士会とともに歩まれることを期待しています。

■全日本建築士会の基調
  • 匠は人、人は心!
  • 住み手とともに建築を!
  • 在来工法の継承と開発をつうじ木造建築文化の殿堂を!
  • 働きながら学び、すぐれた建築士に!
  • 建築界の民主化と革新を、地域住民とともに街づくりを!

事業と組織

木造建築に関わる技術技能を受け継ぎ、その発展を目指しています。  技術・技能

日本の誇る木の文化の継承は重要な役割です。  木造文化

各国建築界との継続的な交流を続けています。  交流

全日本建築士会の事業は、大きく三つに分けられます。
 その第一は、木造建築技術・技能の研修と向上のための活動です。会誌を通じた最新技術の紹介や、研修会や見学会の実地学習がその中心です。
 第二の活動の柱は、木造建築文化の継承と発展のための活動です。独自の公開講座を継続して開催しているほか、建築道具館の設置とその運営、また、会誌誌上での研究発表など積極的に進めています。
 そして第三の活動は、各国建築界との交流活動です。特に中国建築界とは、国交回復以前より継続的な交流を続け、相互に訪問を行なっているほか、モンゴルなどアジア地域の建築界とも交流活動を展開しています。

住み手とともに学ぶ公開講座

 会員の技術技能の向上や木造建築文化をテーマにした研修活動・情報交換とは別に、定期的に木造建築を学ぶ公開講座を企画、広く一般の方にも参加を呼びかけて開催しています。また、室内でのセミナーだけでなく、興味深いテーマを追いかけての旅行なども行っています。
 最近では、本格的な木造天守の復元が行なわれた白石市の白石城再建工事や鎌倉建長寺三門の解体修理工事の見学会などを開催し、普段はみられない豪壮な木組をつぶさに見学しました。また、時宜に応じた長寿社会対応住宅の見学会なども開きました。
 これらの公開講座からは、「循環型社会と木材」(有馬孝禮著)などの単行本も生まれました。
士会ブックス1

有馬孝禮著 全日本建築士会発行
「循環型社会と木材」
(1470円)

 この他にも、 一般社団法人全日本建築士会では次のような出版物を発行しています。
 1級、2級建築士学科テキスト/住まいと地域づくり/神輿職人の詩/年輪の記、日本の大工道具ほか

海外建築界との積極的な交流


 全日本建築士会は、その創業以来、海外建築界との積極的な交流を進めています。とくに中国とは、日中国交回復後間もない1977年に第一次の訪中団を送り出して以来、16年間に5回の訪中と4回の訪日を相互に行ない、お互いの建築事情を学び、両国の友好発展など、さまざまな成果 をあげています。
 とくに1993年の第4次中国集体建築企業協会訪日団との間では両会の「交流・協力にかんする合意書」を締結し、これまでの相互交流に新たな一頁を加えました。
  

建築行政への提言

 一般社団法人全日本建築士会では、その創設の趣旨を踏まえ、日本の風土に根ざした住まいづくりを進めるため、建築行政への提言も積極的に行なっています。近年では、受験者の減少が続いている木造建築士試験の在り方について、大工職能の確立という観点から、2度にわたって建設大臣に申し入れを行ないました。平成8年度から、新しい内容で木造建築士試験が行なわれましたが、当会の申し入れも、その改革を方向付けるものとなりました。