第5回日越伝統木造建築交流会議

日程

2016年9月14日(水)~9月20日(火)
9月14日9:30
18:15
成田発
HUE ホテル着
9月15日10:00應陵(啓定帝陵・Khai Dinh)調査・謙陵(嗣徳帝陵・Tu Duc)調査
同上14:00修復現場調査(太廟・Trieu Mieu Temple)の落成式
グエン王朝(Nguyen Lord 1558年)初代霊廟
南郊壇(Nam Giao Esplanade)
同上18:30レセプションパーティー Duy Tan Hotel
9月16日7:30The main day of the conference
9月17日8:30インペリアルパレス(Hue Inperial)歴史博物館(Hue Museum of Royal Antiquities) ・考陵(明命帝陵 Minh Mang)
9月18日8:30
12:00
フエ出発 ホーチミン
自由行動
9月19日終日
23:00
自由行動
ホーチミン発
(成田は日本時間、ほかは現地時間表示)


第5回日越伝統木造建築交流会議 THE INTERNATHONAL CONFERENCE 報告

   ――国際シンポジウムの開催――
フエ遺跡保存センター主宰のフエ遺産保存会議が2016年9月15日に開催された。
日本からは本会、早稲田大学、ドイツ・フランス・韓国、ユネスコ関係者、等多数が出席した

会議 世界遺産に登録されているベトナム中部の古都フエに点在する伝統木造建築群についてベトナム政府系機関からの要請を受けて修復・保存に技術面で協力している本会が、2016年9月16日に現地で5回目となる「日越伝統木造建築交流会議」を開いた。今回は、日本とベトナム以外にドイツ、フランス、韓国からも専門家が招かれ、保存活動の重要性について各国からの論文発表や討論が行われ、参加人数は過去最多となる約100人に上った。
フエは19~20世紀に存在したベトナム最後の王朝、グエン(阮)朝の首都として栄えたトゥアティエン・フエ省の省都で、市内の中央を流れるフォーン川北岸の旧市街地に点在する旧王宮などの100以上の建物で構成する木造建築群が、「フエの建造物群」として1993年にベトナム初の世界遺産に登録された。
フエの木造建築群を構成する建物の大半は、日本と同様に高温多湿の気候によって木材の劣化が激しく、シロアリによる腐食も目立ち、インドシナ戦争やベトナム戦争によって壊滅的な被害や大きな損傷を受けた建物も少なくない。
木造建築群を管理するベトナム政府系機関の「フエ遺跡保存センター」(ファン・タン・ハイ所長)は、ベトナムの歴史の象徴ともいえるフエの木造建築群を後世に継承する修復・保存を一大プロジェクトに位置付けている。修復作業は現在までに2~3割程度の進捗にとどまっているが、今後おおむね50年間でほぼ完了させる計画としている。フエ遺跡保存センターの関係者は「そのためには、同じアジアで木造建築の歴史と伝統を持つ日本からの更なる技術協力が不可欠だ」と強調する。
会議 2012年にフエ遺跡保存センターからの要請を受けて本会がフエ遺跡保存センターと共同で発足させた日越伝統木造建築交流会議は、今年9月に現地で開いた5回目の会議には、本会から海老原忠夫副会長、中村光彦専務理事、今井正敏、一糸左近の両理事及び加藤博之企画業務課長が参加した。今回は初の試みとして参加国を日本とベトナム以外にも拡大し、宮殿内部を彩る家具や調度品など木造建築以外の分野も含めた専門家がドイツ、フランス、韓国から招かれ、5カ国の専門家による木造建築群の修復・復元で重視すべきポイントなどについて論文発表や討論が行われた。
本会からは中村光彦専務理事が鳥取県倉吉市の伝統建造物群の再生と、伝統建造物群と調和した市全体のまち並み形成について概要を紹介した。この中で、フエの建築群の保存のヒントにもなる可能性がある制度として、日本の「伝統的建造物群保存地区制度」について解説した。
会議 同制度は、歴史的な建造物の保存・再生を建造物単体ではなく「面」として捉え、周辺を含めた一帯では歴史的景観に悪影響を与えるような新築やストックの外観変更に関する規制を強化し、その代わりに、景観に調和した建物や外観変更には国が財政・税制面等で優遇するという仕組みである。中村専務理事が同制度を紹介した背景には、木造建築群の保存・修復を観光の活性化策としても捉えるフエ遺跡保存センターの意向がある。現在も世界遺産見学を目的に各国からフエを訪れる観光客は多いが、これからも木造建築群の保存・修復が進展していけば、観光客はさらに増えると考えられている。フエ遺跡保存センターは、このような考え方を着実に具体化するため、木造建築群と調和した周辺地区の新築・改修規制も進める必要があるとの問題意識を持っている。
会議 また、今井正敏理事は、フエの貴族住宅の一つである延福長公主祠の修復の技術指導を行ってきたが、その過程から考察された意匠と構造の特徴について日本の伝統木造建築と比較検討した結果を発表した。
今回の会議後にフエ遺跡保存センターからは、新たな組織として「アジア伝統木造建築保存センター」を創設し、日本やベトナムと同様に伝統木造建築群が多く、様々な保存問題を抱えるラオスやミャンマー等も加えて解決を図っていく構想が伝えられ、全日本建築士会としても今後、前向きに検討して行くこととしている。

日越伝統木造建築交流会議の経緯

19~20世紀に存在したベトナム最後の王朝、阮(グエン)朝の首都として栄えた古都・フエ。市内中央を流れるフォーン川北岸に広がる旧市街地に点在する旧王宮や寺院、博物館などの木造建築群は「フエの建造物群」として1993年に同国初の世界遺産に登録されました。
高温多湿の気候のため、木材の腐食が激しい上、戦争によって損傷を受けた建築物もあり、これらを後世に伝えていくために修復・保存が急務になっています。世界遺産としての基準を満たしたまま修復作業を進めるには、木造建築に関する技術の継承と、それに精通した人材の確保・育成が大きな課題です。
こうしたベトナム側の窮状を受けて、建造物群の修復・保存に協力するため、フエで宮殿のシンボルとして現存する午門や太和殿の修復・保存に長く携わってきた中川武早稲田大学名誉教授の協力を受け、2012年に当会と宮殿などの歴史的建築物群を管理するベトナムの公的機関・フエ遺跡保存センターとの間で日越伝統木造建築交流会議が発足しました。以来、今秋で5年目を迎え、技術協力・人材育成などの環境整備に協力を進め、2014年10月の第三回日越伝統木造建築交流会議ではユネスコ・イコモス委員を迎え、フエ王宮内の劇場・閲是堂においてユネスコ・イコモスの委員会開催に向けた発表・討論が行われました。

フエの概要

会議 ベトナムの中部の都市・フエは、19~20世紀に存在したベトナム最後の王朝、阮(グエン)朝の首都として栄えた古都です。市内中央を流れるフォーン川北岸に広がる旧市街地に点在する旧王宮や寺院、博物館、皇帝廟などの木造建築群は「フエの建造物群」として1993年に同国初の世界遺産に登録されました。
かつてフォーン川北岸(左岸)の旧市街(京師)には阮朝の官僚と庶民が住み、南岸(右岸)の新市街にはフランス人居住区が置かれていました。旧市街は城壁に囲まれた碁盤の目状の方形都市であり、その南側に更に城壁と堀に囲まれた王宮があります。フエに建てられた阮朝の建造物群には、中国式の建築様式にバロック建築とベトナムの伝統的な建築が取り入れられている点に特徴があります。
フエ旧市街を囲む城壁は、フランス帰りの建築家レー・ヴァン・ホクが設計したものです。城壁内部の建築は北京の王城の形式に倣い、北京の紫禁城を4分の3に縮小した王宮が置かれています。王宮の東側には、国子監や六部などの官庁が置かれていました。現在、王宮はフエ遺跡保存センターによって管理されています。 王宮地域は縦604m、横622m、高さ4m、厚さ1mの城壁で守られています。城壁の外には濠がめぐらされ、水量は四方の水門で調節することができます。王宮の建造物の上部はふんだんに使われた陶磁器やガラスの破片で装飾されており、また、屋根瓦の固定に使われている漆喰は、建物の装飾にも使用されています。王宮の建築物に代表される阮朝建築は、2つの建物を屋根で結合して1つの建物とし、広い空間を作り出す点に特徴があります。2つの建物の屋根の間には雨水を流すための溝(樋)が設けられていますが、ベトナムの集中豪雨を樋だけで処理することは難しく、漏水、木材の腐食が問題になっています。
午門と呼ばれる王宮の正門は、正午になると太陽が門の真上に来るように設計されています。午門には複数の入口があり、中央の入口は皇帝専用の通り道になっていました。午門が完成した1834年には門の上に木造2階建て、5つの望楼を有する五鳳楼が建てられ、建設当初の五鳳楼には金箔が貼られていたといわれています。かつて午門はシロアリによる多大な被害を受けていましたが、ユネスコによる修復作業や日本からの援助によって、門の崩壊に対策が施されました。フエ王宮の午門も、やはり北京の紫禁城に設けられている午門をモデルにしています。