社団法人全日本建築士会創立50周年記念事業  日仏景観会議?日光・田母沢・東京-開催
  <経過報告>

11月15日・16日・18日に日仏景観会議「日光・田母沢」が木造伝統建築文化の継承と発展を主題に日光東照宮・日光旧田母沢御用邸・東京日仏会館でフランスの建築代表団の参加により開催されました。日仏景観会議の概要を報告します。


日光東照宮特別拝観と平成の大修理見学
−15日13時〜16時 日光東照宮−
 日光東照宮は御祭神徳川家康公400年式年祭に向けて現在歴史的な本殿・石の間・拝殿を始め東西透塀、正面唐門など重要な主社殿の大修理中である。今回日光東照宮・日光社寺文化財保存会のご好意により特別拝観と大修理現場を見学した。
 11月15日朝8時30分に上野駅公園口より主催者・フランスの建築代表団はじめ関係者50人を貸切バスに乗せ、日仏景観会議の会場東照宮晃陽苑に向い、途中羽生サービスエリヤで埼玉県支部の参加者を乗せ晃陽苑に、電車・車の参加者と合流し昼食後、東照宮特別参拝と平成の大修理見学のため、直接参加者の待つ東照宮五重塔前に、貸切バス・晃陽苑のマイクロバスで向う。
 紅葉と七五三宮参りの人出と重なり、途中交通渋滞に遭い車の移動が出来ず、徒歩で移動した。今回景観会議に全国より104名の参加者が集合した。
 東照宮400年祭事業部長柳田主典と関係者の案内で東照宮の社殿を特別拝観した。石鳥居、五重塔、表門・三神庫、神厩舎(三猿=みざる・きかざる・いわざる)、御水舎、陽明門(日暮門・逆柱)、東西回廊(眠り猫と雀)、透塀、御本社(拝殿・石の間・本殿)等々について現地で歴史的背景を含め詳細な説明を受けた。拝殿において参加者全員特別祈祷を受け、祈祷後平成の大修理中の石の間の床修復現場を見学、日光社寺文化財保存会浅尾技師より腐朽の原因、修理方法等について説明を受けた。
修復工事現場の仮囲いを、参拝者が見えるように透明のビニール等で施工しているのに驚嘆し、特別拝観と大修理現場の見学を終了した。

日光東照宮概要
 日光東照宮は、元和3年(1617)徳川初代将軍徳川家康公を御祭神に祀った神社である。家康公は、元和2年4月17日駿府城(静岡県静岡市)で75歳の生涯を終えられ、直ちに久能山に神葬された。そして遺言により、一年後の元和3年4月15日、久能山より現在の地に移された。
 正遷宮は、同年4月17日二代将軍秀忠公をはじめ公武参列のもと厳粛に行われ、ここに東照社として鎮座した。その後正保2年(1645)宮号を賜り、東照宮と呼ばれるようになった。
 なお、現在のおもな社殿群は、そのほとんどがご鎮座から20年後の寛永13年(1636)三代将軍家光公によって、造替された。
 境内の特徴は、自然の地形を生かした参道や階段を用い、バランス良く配置された社殿群が荘厳な宗教的空間をつくりだしている。さらに建物には、漆や極彩色がほどこされ、柱などには数多くの彫刻が飾られているが、これらは単なるデザインではなく、信仰形態や学問・思想があらわされている。

講演 東照宮平成の大修理
−15日17時〜18時
 東照宮晃陽苑コンベンションホール−
 講演を晃陽苑コンベンションホールで17時から18時まで日光社寺文化財保存会浅尾技師より、東照宮「平成の大修理について」スライド、展示品を用いて講演を受けた。概要は次のとおり。
 財団法人日光社寺文化財保存会について
 日光社寺文化財保存会は文化財保護法に基づき文部科学大臣が指定した工芸技術部門の重要無形文化財保持者の保持認定団体である。
 日光社寺文化財保存会は2社1寺(二荒山神社 東照宮 輪王寺)の国宝及び重要文化財指定建造物110棟の保存修理・調査・防災施設を整備・管理している。これらの社殿群は平成11年12月「世界文化遺産」に登録されている。
 平成の大修理について
 現在は、「昭和の大修理事業(昭和25?61年)」の初期に実施された主要な社殿が修理から半世紀が経過し、外部装飾の劣化とともに木部腐朽が進行し、改めて根本的な経年修理を必要とする節目の時期を迎えている。
 このような中で、平成19年度から、平成28年(2016)の御祭神徳川家康公400年式年祭記念事業として平成36年度(2024)まで、『平成の大修理』として長期計画の下での大修理事業が実施されている。
 平成の大修理は、東西透塀・正面唐門・彫子塀・神興舎・拝殿・石の間修理 総事業費19億9千万円 事業期間72ケ月平成19年4月1日から平成25年3月31日までである。
 なお、『平成の大修理』は二荒山神社、輪王寺も平行して施工されている。

懇親会
−15日18時10分?20時晃陽苑レストラン−
 懇親会は、晃陽苑レストランで18時10分から開催柳生本部理事の司会で進められ、NPO法人日仏景観会議代表宇田英男氏、社団法人全日本建築士会専務理事中村光彦氏から主催者の挨拶を受け、今回特段のご協力を頂いている日光東照宮の柳田二郎主典より歓迎の挨拶を受けた後、フランス招待者 ICCB(大工と木造建築研究所)所長ダニエル・クーデール氏、大工組織国家代表ダニエル・ヴァウスジック氏、フランス大使館科学技術部科学技術参事官ジャンールイ・アルマン氏、国立情報学研究所客員教授アンリ・アンジェリノ氏、早稲田大学創造理工学部建築学科教授中川武氏ら関係者の紹介が行われた。続いて「日光・田母沢」会議の設営・準備をされた地元の宇都宮支部の海老原本部理事の歓迎の挨拶と関係者の紹介、酒井宇都宮支部長の乾杯で懇談に入り、日仏の交流を深め、和やかなうちに懇親会は終了した。

旧日光田母沢御用邸研修
−16日13時〜16時
 日光田母沢御用邸公園の研修ホール−
 宇都宮大学講師海老原忠夫氏(元栃木県建築課長として旧日光田母沢御用邸の存続に尽力)から旧日光田母沢御用邸の特徴について説明され、続いて旧日光田母沢御用邸復元工事を調査・設計・工事監理を7年に渡り担当された旧日光田母沢御用邸復元工事監理技官今井正敏氏から旧日光田母沢御用邸の江戸・明治・大正の建築仕様と歴史的背景ついて説明を受けた後、景観会議のために参加され、復元工事を担当された各工種の匠、錺金物工事の有限会社鈴木錺金の鈴木氏(古来からの水銀金鍍金を踏襲されている)、屋根工事の株式会社小野工業所の斎木氏・佐々木氏(旧来の柿葺きを銅版柿葺きにされた)、灰汁洗い工事の株式会社美装層工業の清重氏・真坂氏(旧日光田母沢御用邸内外装約1300坪灰汁洗いを行い木を蘇らせた)、畳工事の有限会社職人気質の柳林氏が紹介された。各匠は関係部所で説明され参加者の質問に答えられていた。見学は3班に分かれて行われ江戸・明治・大正の建築様式等熱心に見学された。途中参加者全員研修室(和室)で茶道の接待を受け、「侘び寂び」に触れ感激していた。

旧日光田母沢御用邸の概要
 旧日光田母沢御用邸は、明治32年(1899)に造営された。皇太子嘉仁親王(大正天皇)の御静養のための御用邸で、大正天皇のご即位の後、大正7年から10年にかけて大規模な増改築が行われ、現在の姿となった。
 また、この建物の内の3階建ての部分は天保11年(1841)に紀州徳川家江戸中屋敷として、現在の赤坂御苑迎賓館の在る地に建てられた。その後、明治の維新を経て、明治6年の皇居炎上から明治憲法が発布される22年までの16年間、すなわち近代日本の基礎が固まる時代を、仮皇居の中心部分として使われてきた。
 田母沢御用邸は、この三階家部分を移築して聖上御殿とし、銀行家小林年保の明治期の在来別荘家を皇后宮に、そして大正期に増築され公的部分から成る3時代にわたる建物で構成されており、その規模は建築の床面積4、471uで、3階を除くすべての屋根がひと繋がりになっており、1棟の床面積では我が国で最大の木造建築である。建築の様式としては、移築された江戸期の3階家部分が数寄屋風書院で、1階から3階まで書院様式から数寄屋風に変化をしている。明治期に建てられ在来家は栂普請の京風住宅となっており、大正期に増築された部分は、京都御所の御常御殿の意匠を取り入れた、宮廷風となっている。
 また、洋式の生活を早くから取り入れられたことから、和洋折衷様式ともなっており、様々な様式を見ることができる。
 昭和19年には、皇太子明仁親王(今上天皇)が疎開のため、約1年間にわたり滞在きれており、田母沢御用邸の建物は江戸期・明治期・大正期の最高度の木造建築の集積であるとともに、江戸時代の後期から明治・大正・昭和を生き続け現在に至っている。
 ※平成15年(2003)「国の重要文化財」に指定され、平成18年(2006)「日本の歴史公園100選」に選定された。

田母沢邸 飾り金物(大きい画像にリンクします)

フランス招待者講演
−16日9時〜12時晃陽苑コンベンションホール−
−18日11時〜14時 東京恵比寿日仏会館−
 講演はNPO法人日仏景観会議 代表宇田英男氏の司会で行われ、講演に先立ち日仏景観会議にご尽力を頂いているフランス大使館科学技術部科学技術参事官ジャンールイ・アルマン氏、国立情報学研究所客員教授アンリ・アンジェリノ氏、から日仏交流150周年を踏まえ挨拶後、フランス招待者の二氏から講演がスライドを用いて行われた。

日光・田母沢会議の経過報告
−18日10時?11時東京恵比寿日仏会館−
 経過報告に先立ち、社団法人全日本建築士会佐藤会長、フランス大使館科学技術部科学ジャンールイ・アルマン技術参事官から挨拶をうけた。続いて全日本建築士会創立50周年記念事業と日仏景観会議の経緯・意義、日光東照宮について柳生本部理事、日光田母沢御用邸は今井本部理事から、それぞれスライド用いて歴理的意義を含め経過報告された。

基調講演と公開討論「木造伝統建築が住まいの景観に持つ役割」
−18日14時30分〜17時東京恵比寿日仏会館−
 基調講演は、早稲田大学創造理工学部建築学科中川武教授より日光東照宮・田母沢の日仏景観会議の経過をふまえ、「木造伝統建築が住まいの景観に持つ役割」を主題として講演された。概要は次の通り。
 日光東照宮と旧田母沢御用邸のような近代和風上流住宅の日本建築史上の位置付けと理解を基礎にして、木造伝統建築文化の現代における継承と発展について、木造伝統住宅の技術・生産・空間・社会に於ける<内部と外部>の連関をスライド用いて講演をされた。
 引き続きパネルディスカッションが中川武教授を座長として開催されパネラーに次の方々が参加され、木造伝統建築文化の継承と発展・景観と住まい・木と環境・景観と規制等々について意見交換がなされ、会場の方々からの積極的な発言があり盛会うちに終了した。

パネラーは次の方々である
・座長 早稲田大学創造理工学部建築学科教授 中川武氏
 (カンボジアアンコールワット修復日本政府救済チーム団長。福井県柴田神社等にも関係され伝統木造建築にも造詣が深い)
・ICCB(大工と木造建築研究所)所長 ダニエル・クーデール氏、
・大工組織国家代表 ダニエル・ヴァウスジック氏
・東海大学情報デザイン工学部部長 羽生修二氏
 (日本では数少ないフランス文化省「古建築歴史と保存高等講座終了資格」を取得修復技術の専門家)
・宇都宮大学講 海老原忠夫氏 
 (元栃木県建築課長 旧日光田母沢御用邸の存続に尽力された)
・NPO法人日仏景観会議 代表宇田英男氏
 (日仏景観会議の創設者として日本各地に日仏景観会議を主催されている)
・全日本建築士会専務理事 中村光彦氏
 (元宮内庁工務課長 旧日光田母沢御用邸の存続に尽力された。現在伊勢神宮式年遷宮技術総監)

社団法人  全日本建築士会事務局
 TEL:03-3367-7281 FAX:03-3367-7283 Eメール:znchikai@jade.dti.ne.jp